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「交響的前奏曲」について

この「交響的前奏曲」 は1915年に作曲された作品ですが、マンドリン合奏の中でも構成の優れた、文字通りの交響的
な構成を有する大曲です。「Il Voto」にも見られる、彼独特の重厚な和音の動きと計算された曲の運び、それに何より
も一つの主題が冒頭では低く小さく、しかも感情を内に秘めて押し殺すように提示され、転調が繰り返されて主題が確
定した後は、様々な形の伴奏を伴って展開されるという具合で、一つの主題が曲を通じて大きく貫ぬかれている点で、
線が太い曲という印象を与えている。また、この曲は劇的要素が多く、若者の燃えるような宗教的な情熱が全曲を通じ
て満ち溢れていますが、先に述べたように、主題の提示とそれに続く転調は近代的な手法を感じさせ、いわゆる「イタ
リアのマンドリン音楽」とは、はっきり一線を画することができると思われます。
しかしながら、彼の旋律の甘さの底に流れるものは、やはりイタリア人ならではの「イタリアのセンチメンタリズム
」で、そういう意味では、「近代的作曲技法」と「イタリアのセンチメンタリズム」とが見事に融和したこの「交響的
前奏曲」は、マンドリン音楽にとって貴重な財産であるといえる。

(第67回定演パンフより)

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