本曲の作曲者ロドヴィコ・メラナ・ヴォートは、19世紀から20世紀にかけて、スイスのイヴェールトンの町に住み、 マンドリン・ギター教師をしていたことが知られているのみである。後年はローザンヌ地方に移り住んだといわれる。 彼の作品には、本曲の他、イルプレツトロ社の主催による第3回作曲コンクールにて金賞を獲得した「過去への礼 讃」が有名である。 1. Tempo 山のこだま Klanken uit hetgebergte アンダンテ4/4 アルプスの夜明けである。ピアニシモで入ったマンドリンの旋律は・カンタ-ピレ(歌うように)で 牧場の朝の景色をくっきりと浮かばせる。三連符のスラ-(なめらかに)が、十重廿重になった山々の谷間にこだます るかのごとく、おおらかに歌いあげられる。 2. Tempo 牧人の愛の唄Liefdeslied vao den Herder Scherzo(詔諺曲)3/4 牧人のくちずさむおどけた唄が聞こえる牧場の午後のひと時。lstマンドリンの奇妙な旋律。 次にマンドラ・マンドチェロ・フルートが、おおらかに歌い出す。ダルセーニョして更にコーダ(結び)の部分に入る と、気分は一変して、Scherzo 口短調からワルツ風のト長調に転調される。牧人とその恋人が唄う愛のカノンである。 3. Tempo 黄 昏 A Vespero アンダンテ・ソステヌート2/4 アルプスの夕暮れ。牧場の静寂。マンドリンのスタッカートがうまく表現している。 Espressivo(感情をこめて)では、牧人の今日一日の回顧がその叙情的な旋律の中にしみじみとうかがわれる。いつ か牧場に夜のとばりは降りて、雄大なアルプスも今は闇の中。 4. Tempo 終曲・口ンドRondo Finale アレグロ6/8イタリー風の情熱的タランテラのリズムである。序奏に続いて快活なテーマが出現し、繰り返される。 更にテーマは変化し、めまぐるしく他のテーマやエピソードを経てダルセーニョされ、第一テーマが再帰する。更に曲 はコーダ(結尾)に走り込んで、高音楽器の鋭い6連符の和音の下を、重厚なる低音楽器群が力強く第一テーマを打ち 出す。そして急に piu mosso(はやく)して終わる。軽快なタランテラと重厚なそれの対比もまた面白い。 |
(第62回定演パンフより)